2017年 7月 8日(土)の記紀歌謡万葉集研究会の報告 

 
◆第 1 1 回 記紀歌謡万葉集研究会 
  平成29年 7月 8日(土)午後 1時〜3時 於人形町区民館 
 座長 橋本正浩 文責 長尾誠 
 出席 1 2 名 
 


前回に引き続き 日本書紀で読み残した歌謡について取り組んだ。

第十五番歌
「活日(イクヒ:大神の酒人)が崇神帝に御酒を奉って」
従来読み:此の酒は 我が神酒ならず 倭成す 大物主の 醸みし神酒 幾久 幾久
担当者より詩の読みと説明があった後、橋本氏が次の読み・解説をされた。
読み:この神酒は 我が神酒ならず ヤマトなす 大物主の 醸(か)みし神酒 活日さ 幾久
  解説:我がの「が」は連帯修飾語を作る格助詞 「〜ための〜」
「大物主の」の「の」 は「〜ために〜(他動詞)した+(体言)」の連用修飾語。
「倭成す」の「成す」 は任じている・見守っているというニュアンス。
活日さのさは終助詞で「〜ですよ」。

第十六番歌
「諸大夫達が詠った」詩
従来読み:味酒(うまさけ) 三輪の殿の 朝戸にも 出(いで)て行かな 三輪の殿門を
従来解釈:一晩中酒宴をして三輪の社殿の朝開く戸口を通って帰って行こう。
担当者より詩の読みと説明があった後、橋本氏が次の解説をされた。
読み:旨(うま)酒 三輪の殿の 朝戸にも 出(いで)て行かな 三輪の殿とを
解説:朝戸出は、「朝戸をあけて出ること、多く、夜来て泊まった男が帰ることにいう」 即ち、「婚(よば)ひ」。
ユカナの 「な」 は 「他に対して願望する意を表す」終助詞。
ミワノトノトヲの「トノ」は殿で屋敷。トヲはト(場所)、ヲ(格助詞に)

第十七番歌 崇神帝の詩に入った。
従来読み:味酒(うまさけ)三輪の殿の 朝戸にも 押し開(びら)かね 三輪の殿門を
従来解釈:最初の歌謡で主人側が酒をたたえて宴が始まり、前の歌謡で客人が酒を賞し、この歌謡で主人側が接待する。酒宴の一つの形式を示すものか。
担当者は朝戸の解釈で納得がいかない様子であったが、橋本氏が次の説明をされた。
読み:旨(うま)酒 三輪の殿の 朝戸にも 押し開かね 三輪の殿戸を
解説:前の詩で、三輪の屋敷に「婚(よば)ひ」 にお出かけになったらいかがですか。を受けて、三輪の屋敷の戸を押し聞かしてもらおうか。と詠った詩。
「にも」は連語で、指定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「も」で「でも」。
オシピラカネの「おし」は強意の接頭語、「ね」は「他に対して希望する意を表す終助詞で 「押し聞かせてもらおうかね」の意味。
ミワノトノトヲのトヲはこちらの場合、ト(戸)、ヲ(詠嘆の終助詞)
※太田田根子の性別について
日本書紀の読み方で 女性説をとられる橋本氏と男性説の橘高氏等で議論が続いた。
また、「ネコ」が女性に使われているか等々・・・・の議論もあった。

十九番歌
「箸墓説話の詩」に入った。
従来読み:大坂に 継登れる 石群(いしむら)を 手通伝(たごし)に越さば 越しかてむかも
について、担当者から従来説の説明があった後、橋本氏より次の解釈がされた
読み:大坂に 次登れる 石群(いしむら)を 手輿(たごし)に越さば 越し克てむかも
解説:ツギノボレルは「ツギ」次々に、「ノボレ」登るの命令形、「ル」は動作の継続を表す助動詞「リ」の連体形。イシムラは沢山の石の在る所。
「たごし」は 「前後二人で、手で腰のあたりまで持ち上げて担ぐ乗り物」。
「こしかてむかも」は「こすことができるでしょうね」

三十二番歌
御木の国の長い倒木の上を、多くの役人たちが、行き来していた時の詩
従来の読み:朝霜の 御木(みけ)の さ小橋(おばし) 群臣(まへつきみ) い渡らすも 御木(みけ)のさ小橋
橋本氏の読みと解釈
読み:朝霜の 御木の竿の様な橋を 前つ君 い渡らすも 御木の竿橋
訳 :朝霜が降りた 御木の竿の様な橋を マエツキミ(官僚たち?)が 渡っていらっしゃるなあ 御木の竿の様な橋の上を「も」は詠嘆の終助詞。
※マエツキミ(古田説は天子)
次回の予定
次からは古事記の39番から41番(日本書紀にもあり)を研究する。